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【文豪の湯宿】泉鏡花の出発点となった金沢の奥座敷

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群青色の壁が印象的な雲井の間。鏡花は大正8年に書き始めた長編「由縁の女」でも辰口温泉を龍内温泉として登場させている

火事で多くの遺品が焼失したが、硯箱は無事だったという

火事で多くの遺品が焼失したが、硯箱は無事だったという

 文豪たちの作品に登場する温泉宿を訪ねる連載「文豪の湯宿」。今回は「泉鏡花」の「まつさき」(石川県・辰口温泉)だ。

【写真】火事で多くの遺品が焼失したが、硯箱は無事だった

*  *  *
〈叔母の家に急用があつて、故郷から六里来た。(中略)これから田圃路を一里半、開発といふ山を一ツ越すと、辰の口と言つて温泉があつて、叔母なる人は其処に居る。〉

 明治33年に書かれた泉鏡花初期の短編「海の鳴る時」の冒頭に登場する辰口温泉には、実際に鏡花の義理の叔母が住んでいた。9歳で母を亡くした鏡花は、この地で芸者置屋を営んでいた叔母をことのほか愛したという。読み漁った貸本屋の見料は叔母からの小遣いで賄い、文学を志した瞬間も叔母の家にいた。

 この叔母の家の斜め向かいの大きな建物が小説中に「松屋」として登場する今の「まつさき」の旧館。鏡花が滞在した部屋をそのまま再現した「雲井の間」が今も残されている。本館ロビーには、愛用していた硯箱と自筆の短冊が飾られている。

 バイ菌を恐れ、アルコール綿の入った消毒器を持ち歩いていたという鏡花は、この宿でも生ものは一切口にせず、何でも鍋で煮て食べたと伝えられている。

 1500坪の松泉湖庭園と天保年間開湯の伝統があるまつさきでは定期的に鏡花の朗読会を開催している。

■まつさき 石川県能美市辰口町3-1

(文/本誌・鈴木裕也)

週刊朝日 2018年2月16日号

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