Home 宿 宿 【1万円の極上宿】みそ鍋と五右衛門風呂で感じる京都の冬
宿

【1万円の極上宿】みそ鍋と五右衛門風呂で感じる京都の冬

10 second read
0
9

 かつて大原は、世俗を捨てた人々の隠れ里。平清盛の娘、建礼門院徳子(けんれいもんいんとくこ)も隠れ住んだ一人だ。彼女が余生を過ごしたのは天台宗の尼寺、寂光院。その門前に素朴な温泉宿があると知り、冬景色に移ろう洛北を目指した。

 バスを降り、右手の坂を上ると三千院、左に向かうと寂光院である。四方を山に囲まれたのどかな集落は、鄙(ひな)びた風情を感じさせる。染め物や漬物の店をのぞきながら歩くのも楽しくて、ついつい寄り道。旅気分が高まってきた頃、「大原の里」の白いのれんが見えた。

 民宿とは言うものの、広々した玄関で旅館のようなたたずまいだ。建物は昔ながらの和風建築で、23の部屋がある。

 「もともとは、うちのおばあちゃんが細々とみそを造って売っていたんです。私たち夫婦が民宿を始めたのは昭和45年で、手造りみそを使って鍋を始めたら好評で名物になったんですよ」

 出迎えてくれた女将(おかみ)さんに宿の歴史を尋ねると、そんな答えが返ってきた。あちこち旅をしてきたけれど、みそ自慢の宿は初めてだ。夕食が楽しみだが、はたして部屋はどうだろう。

 ドアを開けると8畳の和室で、四角いカサの電灯が昭和の雰囲気を漂わせている。縁側の向こうには庭が広がり、その背後には冬枯れの山。作り込み過ぎない自然な庭は、金閣寺出入りの庭師の手によるという。山里らしさが生かされて、しっとりした味わいがある。 

 こたつに足を入れてくつろいでいると、おばあちゃんの家に来たような……。民宿なのでお茶が運ばれてくることもなく、ふとんも自分で敷くのだが、その気楽さがむしろ心地良い。

 すぐそばの寂光院にお参りし、平家物語を思いつつ宿に帰る。体が冷えたので、浴衣と半てんを持って大浴場に行った。内風呂と半露天風呂、少し段差を上がると木々に囲まれた露天の五右衛門風呂がある。泉質は無色透明の単純温泉で、さらりとした肌触りだ。

 直径2メートルもある五右衛門風呂に身を沈め、こぢんまりした庭を見る。ここに雪が降り積もると、また格別に違いない。雪見風呂を想像していると、寂光院の鐘がゴーンと鳴った。「諸行無常の響き」と言うべきか。

 そしてようやく、みそ鍋である。食堂には早々と宿泊客が集まり、和やかに鍋を囲んでいる。「大豆と米こうじ、塩だけで造ったおみそです。添加物などの混ざり物がないから、煮詰まってもこげつかないんですよ」と女将さん。

 みそは1年もの、2年もの、3年もの、白辛口など数種類があり、それぞれ味見もできる。お酒のアテにするもよし、ご飯に載せて食べ比べるもよし。熟成の年数が増すほど、カドが取れてまろやかになっていくのがわかる。

 複数のみそを調合して作ったというだしに、たっぷりの具材を入れて煮込む。主役は京都のブランド鶏「京赤地鶏」で、適度にしまった身にみそが絡んでうま味を引き立てる。野菜やきのこから出るコクも合わさって、煮るほどに味が変わるので箸が止まらない。

 みそ鍋だけでもボリュームがあるが、事前に頼めばお造りや天ぷらを追加するプランもある。また、女性に人気の「コラーゲンみそ鍋」は1100円、丹波篠山(ささやま)産のイノシシを使った「ぼたん鍋」は3300円追加で食べられる。山椒(さんしょう)がピリリと利いた「山椒ぼたん鍋」もおすすめらしい。

 翌朝、縁側のガラス戸を開けると凛(りん)とした山の冷気が入ってきた。古き良き大原の冬を満喫した一日だった。名残惜しいが、そろそろ世俗に戻るとしよう。

 文/北浦雅子 写真/鈴木 遥

電話/075・744・2917

住所/京都市左京区大原草生町31

料金/1泊2食平日9850円~、休前日1万850円~

客室/トイレなし8畳和室など全23室

温泉/単純温泉

交通/東海道新幹線京都駅から大原行きバス1時間、大原下車徒歩13分。または名神高速京都東ICから20キロ

http://www.oohara-no-sato.co.jp/

(月刊「旅行読売」2018年2月号より)

Let’s block ads! (Why?)


Source link

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Check Also

体験型観光の「農泊」に脚光 みそ造りやトレッキング 山梨の甲州民家情報館、利用100人突破

 農山漁村での滞在と体験イベントを組み合わせた旅「農泊」への取り組みが進んでいる。江戸後期の養蚕農家を改装した … …